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Of Course!!

二次創作のイラストや小説を扱ってます。各作者様方・制作会社様とは一切無関係です。同性愛表現のあるものも置いているので、苦手な方はご注意を。ちょくちょく萌え語り・日常話も混じってます。




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時代物もどきパラレルの続きです。


 近ごろ発展が目覚ましい武家の一つである堀家の嫡男が、公家の鹿島家から長女を妻として娶った。その娘は堀家の嫡男より一つ年下だが、背は彼より四寸ほど高い。細くしなやかな身体と整った顔立ちは性別を超えた美しさで、実際に男装した姿も見目麗しい。そもそも彼女は長い間、男として生活していたのだ。
「何で、俺との縁談を受けようと思ったんだ」
 布団の中で身体を寄せ合う彼女の耳元で、政行が囁く。遊は小さく身じろぎし、彼の顔を見た。
「そろそろ、限界だなって感じてたんです。私を男だと思って他の家の姫との縁談を持ってくる人は何人もいたんですけど、本当は女なんだから受けられないじゃないですか。けどあまり縁談を断りすぎても不審がられるし、もう隠し通せないって思ってました」
「そこに理由は分からないながらも、男との縁談が舞い込んできたから乗っかったと」
「そういうことです」
 「いやー、おもうさんを説得するの大変だったんですよ」と遊は明るく笑うが、本当に骨が折れたことだろう。縁談を申し入れてから今日までのことを思い返し、政行は息を吐いた。
「すみません、おまえ様のこと利用したみたいになっちゃって」
「別に気にしねぇよ。おまえと一緒になれるなら、理由は何でもよかったしな」
「いちど山で見かけただけの相手に、そこまでできるってすごいですね」
「なに言ってんだ。相手の顔を一度も見ずに求婚するのも当たり前なご時世だってのに」
「まぁ、それもそうですね」
 遊のあどけない笑顔に、政行の口元も緩む。
「どうやって鹿島に、私に辿り着いたんですか?」
「大したことはしてねぇぞ。おまえが女だって部分は伏せた上で周りに訊いてみたら、すぐに鹿島の名前が出てきたんだ。けっこう有名なんだな、おまえ」
「勉学も武芸もそれなりに自信ありますからね」
「歌だけは絶対に詠みたがらないって話も聞いたけど」
 遊が気まずげに目を逸らす。
「おい、こっち向け」
「嫌です」
「もしかしておまえ、歌は」
「言わないでください」
「分かった。もう訊かねぇから目は逸らすな」
 ゆっくりと政行へ向き直った遊に笑みかけ、彼女の背中を撫でる。遊も微笑み、政行の胸元に顔を寄せてきた。
「私、おまえ様と結婚できてよかったです」
「……初夜でそんなこと言うなんて、気が早いんじゃねぇのか?」
「そんなことないですよ。だっておまえ様は私を見つけて、いつまで続けられるか分からない茶番を終わらせてくれたんですから。感謝してます」
「のん気なもんだな。武家と公家じゃしきたりやら何やら違うことくらい分かってんだろ?」
 遊は不思議そうに政行を見て、また笑った。
「まぁ何とかなりますよ。男として育っただけあって、多少は武芸も嗜んでますし」
「おまえまさか、流鏑馬のこと言ってるんじゃねぇよな。あんなの武芸のうちに入んねぇよ」
 眉を下げた遊に、政行が口角を上げる。
「何者かが屋敷に攻め入ってきた時に、鏑矢で戦い抜ける自信がおまえにあるなら別だけどな」
「……ごめんなさい、無理です。的しか射たことないですし」
 うなだれた遊の頭を撫で、細い身体を抱きしめた。肌の柔らかさに、彼女が異性だと改めて意識する。
「いざという時のことを考えると、おまえも得物を使える方がいいな。そうだ、薙刀術はどうだ」
「薙刀、ですか」
「覚える気あるなら教えるぞ」
 遊が顔を上げた。その目には強い光が宿っている。
「ぜひ教えてください」
 頷いた政行に、遊が「よろしくお願いします、師匠」と頭を下げた。
「師匠か。何かむず痒いな」
「でもそうなるじゃないですか。びしばし鍛えてください、師匠!」
 真剣な表情の遊が、政行の首に腕を回す。
「嫁いだからには、少しでも早く立派な武家の女になれるように頑張りますね」
 口元を綻ばせた遊に、政行が息を吐いた。
「別に、そんな気張らなくていいぞ。公家の女がいきなり武家になじむなんて難しいだろ」
「いやーでも、なじもうとする気があるに越したことはないでしょう? それに、この家の人の気を害して離縁なんて話になったら困るんですよ。今さら男のふりはできないし、どんな顔して鹿島の家に戻ればいいんですか」
「おまえ、けっこう明け透けだよな」
「夫婦間に隠し事はよくないって言うじゃないですか。あっ、もしかして幻滅しました?」
「別にそういうんじゃねぇよ」
 何があっても彼女を守ると意気込んでいただけに肩すかしを食らった気分だが、彼女の性格そのものはむしろ好ましい。
「武家での生活むいてると思うぞ、おまえ」
「えーっ、初夜でそんなこと言うなんて気が早いんじゃないですか?」
 政行は何度も瞬きながら、いたずらっ子のように笑う遊を見た。小さく笑い声を立てる彼女の両頬を摘み、軽く引っ張る。
「いい神経してんじゃねぇか。やっぱお望み通りびしばし鍛えてやるよ。その方が性に合ってるだろ」
「ちょっ、ほまえはまっ、はへてふははい」
「なに言ってんだよ」
 手を離すと、遊が唇を尖らせて目を逸らした。それを見て笑い出した政行を拗ねたように見た遊に、彼が更に笑う。
 彼女とであれば、きっといい家庭を築いていける。そう確信した政行は、また彼女を腕に閉じ込めた。


「何ぼさっと立ってんだ! 腰が入ってねぇぞ」
「はい、すみません!」
「上を向くな! 敵はそんなとこにいねぇ!」
「ごめんなさい、つい薙刀が」
「言い訳すんな!」
 薙刀の柄で強く床を突いた政行に、遊が慌てて正面を向いた。女中たちがその脇で、心配げな目を二人に向けている。
「あの、坊ちゃん。彼女はお公家様からお嫁に来たばかりですし、そんな言い方は」
「いいんです。気にしないでください。私が頼んだんです」
 眉を寄せて正面を睨んでいる遊の言葉に、女中たちが顔を見合わせた。政行は彼女たちには目もくれず、薙刀を上段に構える遊を見つめている。遊の額には汗が滲み、息も微かに上がっていた。政行が肩をすくめ、今度は軽く床を突く。
「いちど下ろせ。手本を見せてやる」
 下ろした薙刀を床に落とし、遊が両膝をつく。荒い呼吸をする彼女に、「休めとは言ってねぇだろ」と声が飛んできた。
「わかっ、てます」
 遊が身体ごと政行の方を向く。彼は後方に置かれていた巻藁を遊から見える位置に運び、後ろに下がった。左足を前に出し、上段に薙刀を構える。背筋を伸ばし、手に力を込めた彼は、斜めに薙刀を振り下ろした。一瞬の間を置き、斜めに切れた巻藁の上部が滑り落ちる。地面にぶつかった巻藁が渇いた音を立てて跳ね、転がった。
「と、まぁこんな感じだ。おまえも筋は悪くねぇけど、まだ軸がしっかりしてな……遊?」
 振り返った先にいる彼女は、大きく開いた瞳を輝かせていた。恍惚の混じった表情を向けてくる彼女に、政行は戸惑いを覚える。こんな目で見られたのは初めてだ。
「すっ、すごい! かっこいいですね!! 背筋も伸びてるし全然ぶれないし、何かこう、気迫が違うっていうか! その、おまえ様は武士だしこれくらい普通なのかもしれませんけど、本当すごかったです!!」
 興奮しながらまくし立てた遊は、更にしゃべろうとして咳きこんだ。
「お、おい大丈夫か? 少し落ち着け」
 彼女の背中を撫でると、涙を滲ませた目で見上げてくる。
「す、すみません。もう大丈夫です」
 何度か軽く咳をして、遊が深く息を吐いた。
「おまえな、こんなことで興奮してどうするんだ」
「だ、だって本当にかっこよかったんですよ! とても凛としてて、何ていうか、これが武士なんだなって」
「へぇ、かっこいいなぁ」
 遊に顔を寄せると、不思議そうな目を向けられる。
「惚れたか?」
 彼女は数回まばたきをして、少し考え込んだ。
「そう、ですね。恋とかよく分かりませんが、そうかもしれません」
 頬を僅かに染め、照れくさそうに遊が笑う。政行は目を丸くして彼女を見た後、その身体を勢いよく抱き締めた。
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プロフィール

HN:鳴柳綿絵(なるやなぎ わたえ)
好きな漫画・アニメ・音楽など:ブクログに登録してます

男女CPもBLもGLも好きなCP厨です。公式CPは基本的に好き。安芸の国にいます。
好きなCPは野崎くん:堀鹿、進撃:エレミカetc

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